在日台湾同郷会の精神を未来へ
在日台湾同郷会
会長 王 紹英
1973年、蒋経国政権が国連を追われてから二年後、郭栄佶医師は台湾の将来を深く憂慮しました。国内に燃え広がる建国運動・民主化運動・人権運動に呼応し、日本において志を同じくする仲間を募り、在日台湾同郷会を創立されたのであります。
当時の台湾は、戒厳令下に置かれ、中国国民党独裁政権が社会の隅々にまで支配を及ぼしておりました。白色恐怖の陰鬱な空気は海を越え、日本に暮らす私たちをも覆っていました。在日台湾同郷会は、国民党政権から忌避され、初期の会員がブラックリストに載せられたことは言うまでもありません。草創の先賢たちは、危険を顧みず、揺るぎない信念を抱き、忍耐と勇気をもって目標に向かい、苦難の道を歩まれたのであります。その運営のご苦労は、想像に難くありません。
その後、国内外の反体制派や民主運動家の不断の努力により、台湾の政治状況は大きな改善を見ました。白色恐怖は潮のように引いていきましたが、先賢たちが掲げた「台湾国家の確立」という大いなる理想はいまだ道半ばにあります。現代における台湾人アイデンティティの揺らぎ、漂流する政局を見渡すとき、在日台湾同郷会創立の理念こそ、私たちが大切に守り続けるべき精神であると確信いたします。
日本は台湾に最も近い隣国ですが、東京は台北から2100キロも離れております。しかしこの距離こそが、台湾の政局を冷静に見つめる視座を与え、また日本社会に身近に働きかけ、自由かつ多彩な活動を可能にしているのです。
私が林建良元会長のご紹介を受け、在日台湾同郷会に籍を置いてから、すでに40余年の歳月が流れました。同郷会は常に台湾の政治状況を映しながら歩みを進め、その時代ごとに運営の形も変化してまいりました。近年は多くの有能な若者が加わり、自由闊達な発想と行動力をもって、新たな息吹を会にもたらしております。
この40年、私は先賢の方々から薫陶を受け、数多くの示唆と啓発をいただきました。彼らが追い求めた理想、そして後輩に受け継いでほしい精神を思索するとき、心に浮かぶのは今から40年前の光景であります。初めて参加した私学会館での「二二八事件記念会」でした。壇上に掲げられていた「打倒中華民国体制」の横断幕には、先賢たちの熱い志と不屈のスピリッツが力強く刻まれておりました。この八文字に在日台湾同郷会が継続すべき精神が濃縮されています。
以上
